西郷隆盛に学ぶ会設立趣意書

今日の世情は、歪曲された自由主義や物質、金銭万能主義が罷り通り、将に末期的な
様相を態しています。かってわが国の世界に誇る美徳とされた礼節は軽んじられ、恥を
基調とした文化も崩壊の危機に瀕しているといえます。

江戸から昭和のはじめにかけて、世界一の治安のよさと礼節の正しさ、人情の厚さは、
当時わが国を訪れた外国人が等しく驚嘆し、世界に喧伝したほどのものでした。

それが今では、毎日の新聞、テレビで報道されるニュースには親殺し、子殺しをはじめ、
いじめ、虐待、詐欺、強盗、更にはなんとも嘆げかわしいことに政治家、官僚の横領を
はじめ、警察の組織ぐるみの裏金作り、大企業の組織的談合による税金泥棒などなど、
エゴと横暴が罷り通っている様子が報じられない日が無いほどです。

かって日本の文化を支えた家族主義は崩壊し、個人の権利ばかりが唱えられ、ややもすると
エゴが罷り通り、弱い者いじめ、切捨てといったことが平然と行われています。

これらは政治家をはじめ、世の指導者が信念を失い、精神の研鑽を忘れ、社稷を振り返る心の
ゆとりを失った結果、社会への手本を示すべき自覚を蔑ろにし、利己の欲望にのみ走ったこと
から来ています。

また教育の現場においては、人間の基本である是非善悪を教えず、道徳を教えず、近代の正しい
歴史を教えず、今日の国家の礎を築いてきた先人の業績を一顧だにしない。親の恩、先人の恩、
社会のお蔭を教えず、弱者を慈しみ、社会に寄与すべき人間としての義務をわからせようともせず、
ものの本質を見極めさせようとの努力もなされていない。

秩序ある社会の成り立ちに絶対に欠くことの出来ない、祖先に対する尊敬、親に対する孝行、
更には今日の社会を築き上げてきた先人への感謝の気持ちを考えようともせず、単に知識の
詰め込み主義教育により、無限の可能性を秘めた子供たちを落ちこぼれにしてしまう、この
ような偏向した教育の在り方や社会の歪みを正さねばなりません。

そこで私達は、かって新渡戸稲造博士が声高らかに世界に誇った『武士道』(日本の精神、
道徳的教義・規範)の精髄を南洲西郷隆盛翁の事跡の研究を通して検証、実践し、正しい日本
精神を紹介・普及していきたいと思慮しています。

新渡戸稲造博士はかの名著『武士道』のなかで、この武士道を体現した「典型的なる一人の武士」
としてわが『西郷南洲』をあげられています。

世に有名な「子孫の為に美田を買わず」で代表される南洲翁の生き様は、存命中は勿論、没後も
それに続く多くの指導者達に、敵味方を問わず大きな感銘を与え、ひいては列強に伍するほどに
急成長するわが国の近代国家建設に大きく資することになりました。

数々の辛酸を嘗めた上での大覚悟に裏打ちされ、個人としての打算が全くなく、情義に厚く、
清廉潔白、無欲恬淡としたその生き様は、今日の人々に大きな感銘・感動を与えることは
間違いありません。

この西郷隆盛の精神を忘れ、あまつさえ教科書からも抹殺してしまった今日の教育のあり方を正し、
改めて人間としての生き様を問いかけていきたいと祈念しています。

この趣旨にご賛同戴けるより多くの皆様のご参加をお待ち致しています。

平成1612月吉日

世話人代表  末 綱 和 征


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